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空飛ぶクルマと屋上Vポート

2021.12.27

空飛ぶクルマと 屋上 Vポート「空飛ぶクルマ」 着陸帯の強度


 ヘリポートの床面強度を決める前提条件として、ICAOは垂直に着陸するヘリコプターの降下速度から衝撃度を予想しています。具体的に言いますと地上66センチメートルからヘリコプターが自由落下することを想定しそれに耐えうる強度を求めています。自由落下というのは空気抵抗のない状況で9.8m/s2の重力加速度を受けることを言います。ヘリコプターのキャビン内は空気がたくさん入った風船のような状態で、機体密度が小さいうえに、回転するローターは常に揚力を発生させています。さらに斜行着陸ですから着陸帯直上にアプローチした際にはせいぜい高さ2メートル程度でしょう。ですから66センチメートルからの自由落下ということはまず起こりません。それでも安全のため、少しオーバースペックと思われる想定になっています。その66センチメートルからの自由落下を前提にして「床面の曲げ応力」と「パンチングシャー応力」は決まっています。繰り返しの離着陸を前提とするヘリポートや「Vポート」では特にこの「パンチングシャー応力」が重要になってきます(パンチングシャーに関しては『新・ヘリポートの造り方』を参照してください)。
さて「『Vポート』の床面強度はヘリポートと同等の強度でいいのでしょうか」という質問を受けることがあります。私はICAOの委員でもありませんし国土交通省の担当者でもありませんので、責任ある回答はもちろんできません。これまでのICAOの考え方から予想することしかできないのですが、おそらく床面強度に関してヘリポートよりも緩和されることはないだろうと思います。緩和どころか、ヘリポートよりもさらに高い強度を求められる可能性すらあります。少なくともコンクリート製ですとヘリポートよりも厳しくなるのではないかと思っています。着陸帯直上の様子を想像してみてください。ヘリコプターはせいぜい着陸帯上2メートル程度の位置からの着陸です。

ヘリコプターのアプローチ。垂直降下はせいぜい2m

 

 

一方、「空飛ぶクルマ」は着陸帯の真上10メートル〜15メートル程度からの垂直降下を前提とすることになるでしょう。セットリングをはじめとする何らかの予測不能な事態により機体が急降下した場合、ヘリコプターは66センチメートルからの自由落下ですが、「空飛ぶクルマ」は1メートルあるいは2メートル程度からの自由落下を想定することになりそうです。オートローテーションの説明で理解いただいたと思いますが、ヘリコプターの降下には常にローターの揚力が働きますが、「空飛ぶクルマ」は揚力をなくしますので万一の不測の事態が生じた場合、降下(落下)速度はヘリコプターよりも速くなることが予想されます。
着陸帯の直上で、接地に向かい始めるときの「高さ」と「機体の密度」、いずれを取っても「空飛ぶクルマ」の方が厳しい値を使うことになりそうです。

 

 

「空飛ぶクルマ」のアプローチ。10mの垂直降下もありそう

 

 

 

(「Vポート」Vertiport の略称、その他の呼称はバーティポート、バーチポート、ヴァーティポート、ヴァーチポートなど)

書籍案内「空飛ぶクルマと屋上 Vポート」

 

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