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基礎知識

空飛ぶクルマと屋上Vポート

2022.01.19

空飛ぶクルマと 屋上 Vポート「空飛ぶクルマ」パンチングシャーとは


ヘリポートの床面強度を示す場合、「曲げ応力」と「パンチングシャー応力」の2つの基準があります。「曲げ応力」は構造力学の問題、「パンチングシャー応力」は材料力学の問題です。
「曲げ応力」に関しては、高校や大学で建築工学を学んだ方はたいてい理解しています。一方「パンチングシャー応力」に関しては大学の建築学科を卒業した方でも説明できる人はほとんどいないようです。さらに話をややこしくしているのは、建築学科で学ぶ「パンチングシャー応力」とヘリポートに求められるそれは意味合いが異なることです。少し専門的な話になりますが、パンチングシャーのお話をしましょう。
パンチングシャーという言葉を理解しているのは、工学系大学の教員か建築や金属加工に携わる一部の技術者だけでしょう。建築工学では柱の上に床材を乗せるときなどにパンチングシャーをチェックします。「押し抜きせん断」と言われることもあります。床材の強度が足りないと床材に穴が空くことになります。

 

 

建築工学のパンチングシャーの考え方は「打ち抜き」ではなく「押し抜き」

 

 

金属加工では、パンチングメタルという金属板を打ち抜き加工した製品を作る際にパンチングシャーが作用しています。

 

金属加工のパンチングシャーの考え方はヘリポートや「Vポート」の荷重と同様に「打ち抜き」

 

 

パンチングシャーは一瞬の集中荷重

 

 

 ちなみに建築では「押し抜きせん断」と呼ばれることが多く、金属加工では「打ち抜きせん断」と呼ばれることが多いようです。ヘリポートは建築物の一種ですが、パンチングシャーに関しては建築工学の「押し抜きせん断」ではなく、動きのある金属加工の「打ち抜きせん断」に近いイメージです。ヘリポートや「Vポート」の設計でパンチングシャーの確認をするのはまさにパンチで叩いたような一瞬の(超短期の)衝撃に耐える強度の有無を確認することなのです。ヘリコプターや「空飛ぶクルマ」がハードランディングした場合、床面への衝撃荷重は、衝突した瞬間(超短期)にしか働きません。超短期荷重で壊れるものはダメ、耐えるものはOKなのです。
パンチングシャーに耐える材料を考えた場合、コンクリートよりも金属の方がリーズナブルであることは明らかです。コンクリートは超短期荷重でも破壊に至りますが、金属は変形することはあっても破断に至ることはまずありません。破壊したコンクリートは強度がなくなりますが、一部が凹んだ程度の金属は強度が落ちることはほとんどないのです。
また、ヘリコプターや「空飛ぶクルマ」のパンチングシャーの検討をするときに忘れてならないのが欠片(かけら)の発生です。大学で建築や土木などを学んだ者は誰でも知っているのですが、コンクリートは「衝撃荷重」と「繰り返し荷重」に弱いのです。詳しくは、『新・ヘリポートの造り方』をご参照ください。
コンクリートは破壊されると、クラックが生じ欠片が生じるのです。「空飛ぶクルマ」のダウンウォッシュで欠片が飛散したら大変危険です。こうしたことからも「屋上Vポート」床面には金属をお薦めするわけです。

 

(「Vポート」Vertiport の略称、その他の呼称はバーティポート、バーチポート、ヴァーティポート、ヴァーチポートなど)

書籍案内「空飛ぶクルマと屋上 Vポート」

 

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