エアロファシリティー株式会社

コラム

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「新・ヘリポートの造り方」

2025.04.30

「残念なヘリポート」が出来上がってしまう理由 その2


磁界が乱れヘリコプターの計器が狂っても公にしない

こんな例もあります。ある病院ヘリポートに近づくと必ずヘリコプターの計器が乱れる、というのです。

 


当社で行っている磁界調査の様子

 

当社では、既存の屋上ヘリポートの磁気の乱れを調査しています。アルミデッキヘリポートでは磁界に乱れはほとんどないのですが、鉄筋コンクリート床では大きく乱れることがあります。特にコンクリート床版を敷き並べた着陸帯では乱れが大きいようです。真北方向が90度もずれているヘリポートがあり、30度程度の乱れはコンクリートヘリポートでは珍しくありません。

 

最初はMRIといった病院内の検査機器が影響しているのかとも思いましたが、そうではないようです。どうも鉄筋コンクリート床の鉄筋が磁界の乱れを発生させているようなのです。

 

コンクリート床版のヘリポートでは磁界が90度以上もブレることも。これは非常に危険。磁気を帯びた鉄筋が影響していると思われる

 

一般的なアルミデッキの屋上ヘリポートでは磁界の乱れはほとんどない

 

工場内で磁気を利用したマグネットクレーン(マグネットリフト)を使って鋼材を運搬することが最近は多くなりましたが、おそらくその影響だろうと思います。強力な電磁石で吊り上げられた鉄筋は簡単に磁気を帯びます。一度磁気を帯びた鉄筋はなかなか消磁できません。磁気を帯びた鉄筋を使用した鉄筋コンクリート床の上では磁界が乱れるのが当然ですね。

 

 

原因はともかくとして、確かにそのヘリポートに近づくとヘリコプターの計器が乱れるのです。「怖くて操縦してられない」と操縦士はぼやきます。そして、そのヘリポートに近づくときには「特殊な計器(磁気センサー)をOFFにしています」というのです。安全のための計器のスイッチを「磁界が乱れているから」との理由で切っているのです。おかしくありませんか?「『計器が狂うので降りません』とは言えないのですか?」と私が訊ねるとその操縦士は「我々からは言いにくいのです。相手は病院ですからね」と答えました。

 

この「磁界が乱れるヘリポート」というのは世界中にあるようです。先日は韓国の病院からも同様の相談がありました。これから大きな問題になってくるかもしれません。着陸帯では鉄筋コンクリートに「磁気を帯びていない鉄筋を使用のこと」と義務づけるべきでしょう。あるいは「極端に磁界が狂っている場合には着陸禁止」とのルールを作るべきではないでしょうか。

 

※英国民間航空局発行の「病院ヘリポートの基準」の中には「ヘリポート構造によっては、強力磁場が発生しヘリコプターのコンパスは真北と異なる方向を示す可能性がある」との記載があるほか、「アルミニウム製のヘリポート構造は、磁場の発生と磁場と相互作用したりすることは無い」とも書かれています。

30年後のことなんかオレ知らねえ

こんなこともありました。関西地区のヘリポートです。あまり具体的なことは書けません。当初は安全な設計になっていたのですが、設計変更に伴い、ヘリポートの構造も大きく変更されました。私はこの変更に課題があると認識したものの、施主(工事の発注者)とは面識がありませんでしたので、設計変更を行おうとしている施工会社の所長に会いに行きました。「この設計では当初は良くても、30年後、50年後に問題が発生する可能性があります」と指摘したところ彼はこう言ったのです。「あのね、オレはこの現場が終わったら定年でおしまいなの。30年後のこと言われてもオレには関係ないの。それよりもオレの最後のこの現場で少しでも多くの利益を出すことが大切なの。分かるでしょ?」こんな男が中堅ゼネコンの所長をやっているのです。

 

「30年後のことなんてオレは知らない」

 

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