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空飛ぶクルマと屋上Vポート

2021.10.29

空飛ぶクルマと 屋上 Vポート「空飛ぶクルマ」 屋上ヘリポートの課題と対策


垂直離着陸ではセットリングのリスクからハードランディングのリスクへ
「多翼機だからセットリングの心配はないとは言い切れない」と述べました。多翼機でも極力垂直降下は控えるべきでしょう。ヘリコプターは斜めに入ってきて着陸帯の直上1メートルから2メートル程度のところで静止、ホバリングに入ります。ここでセットリングに入ってしまっても大事故は避けられます。ICAO(国際民間航空機関)が定めるヘリポートの着陸帯の床面強度はヘリコプターが地上66センチメートルから物理学でいう「自由落下」した衝撃に耐えることを求めています。速度に直すと秒速3.6メートルになります。ヘリコプターがこのスピードで床面に落ちることはセットリングに入らない限り、まずありえません。おそらくICAOもセットリングでのハードランディングを想定した安全基準を設けたものと思われます。多翼機の「空飛ぶクルマ」がセットリングに入る可能性はヘリコプターよりは小さくなりますが、ヘリコプターよりもはるかに高い位置(10〜15メートル)からの垂直降下でセットリングに入った場合には、衝撃荷重はもっと大きなものを想定しなければならなくなります。

 

ヘリコプターのアプローチ

 

「空飛ぶクルマ」のアプローチ

 

騒音問題は常にある 高いビルの屋上でも遮音壁は必要
都心にヘリコプターが離着陸する場合、近隣住民との間で騒音に関するトラブルが発生することがあります。「環境法の基準を下回っているから問題ない」というわけにはいかないのです。ヘリポートを設置する場合、設置者は騒音トラブルが発生しないように事前に最大限の対策をしなければなりません。「Vポート」では遮音壁の設置は必須でしょう。
現在(2020年)、東京都内にある建物屋上のヘリポート(飛行場外離着陸場)で最も多く利用されているのは都立広尾病院の屋上ヘリポートです。それでもせいぜい1ヵ月に10回程度です。将来の「空飛ぶクルマ」時代には都心の大型ビルに1日に何十回も「空飛ぶクルマ」が離着陸することになるのでしょう。騒音問題への対策は重要です。昭和の時代にはまだ都会にも木造構造物が多く残り、エアコンのない家は窓を開けることも多かったのですが、令和になり都心には木造アパートはほとんど見なくなりました。ビルには防音サッシが入り、エアコンも完備されています。多くの住民は生活騒音を感じることが少なくなり、その許容度は昭和時代よりもはるかに大きくなったわけです。それでも「あるよりはない方がいい、大きいよりも小さい方がいい」のが騒音です。できる限りの事前対策が必要です。
ヘリコプターは斜行での離着陸ですから飛行障害となるものをヘリポートのすぐ脇に設置することができません。遮音壁を建てたくても建てるスペースがなかったのです。その点、垂直離着陸を前提とする「空飛ぶクルマ」は飛行障害物の問題がありません。着陸帯の周りに遮音壁を建てることは可能ですし、建てるべきだと私は思っています。遮音壁を建てる場合は、音源に近いほど効果が大きいと覚えておいて下さい。

 

遮音壁は音源に近い位置に建てるほど効果が大きい

 

離陸前の騒音が大きい
ヘリコプターが直上を飛ぶとき、下にいる人にとって騒音のレベルは最も大きくなります。地上100メートルをヘリコプターが飛ぶときに直下騒音は100デシベルを超えることもあります。しかし実際には民家の直上100メートルをヘリコプターが飛行することなどめったにありません。実はヘリコプターの騒音に関する苦情の多くは飛行ルート直下に住んでいる方からではなく、ヘリポート近隣に住んでいる方からのクレームで、その多くは実際に騒音を測定しても60〜70デシベル程度のものなのです。
一般的にヘリコプターはエンジンを始動してから浮き上がるまでに10分程度の時間を要します。パイロットや整備士には安全のために多くの飛行前点検が義務付けられており、エンジン始動後にチェックする項目も多数あるのです。ドクターヘリなどはエンジン始動から離陸までの時間が短くて済むように準備していますが、それでも平均で3分間程度は必要です。この離陸前騒音が最も多いトラブル要因で、それを未然に防ぐためには、「Vポート」を遮音壁で囲うことが必要になるでしょう。

 

(「Vポート」Vertiport の略称、その他の呼称はバーティポート、ヴァーティポートなど)

書籍案内「空飛ぶクルマと屋上 Vポート」

 

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