コラム
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2026.03.17
積雪地域の救急医療、災害対応を止めない。わずかな時間で温まる「融雪アルミデッキヘリポート」
積雪地域の屋上ヘリポート運用において、深刻な課題となるのが「積雪」と「凍結」です。 すでにヘリポートを運用している病院においては、大きな負担になる人力での除雪作業や、積雪によってドクターヘリの受け入れができないという事態を経験された管理者の方も多いのではないでしょうか。
過去のそうしたご苦労を経験された方ほど、新しい施設を計画する際には「次こそは、確実に雪を溶かせるヘリポートにしたい」とお考えになることと思います。
そこで、これから新たなヘリポートを計画・設計される皆様に、一つ認識していただきたい事実があります。それは、「採用する構造によって、冬場にヘリポートが機能するかどうかが大きく左右される」という点です。
現在稼働している多くのコンクリート製ヘリポートは、その構造上、融雪能力において明確な弱点を抱えています。今回は、積雪地域におけるヘリポート計画で見落とされがちな「構造の違いによる融雪スピードの差」と、降雪時でも確実な運用を可能にする「融雪アルミデッキ」の仕組みについて解説します。

コンクリートヘリポートの弱点は「5時間のタイムラグ」
これまで、屋上ヘリポートの多くはコンクリートで造られてきました。もちろん、積雪対策としてコンクリート内に温水パイプやヒーターを埋め込むシステムは存在します。しかし、ここには構造特有の「ある弱点」が隠れています。
それは、コンクリートが「比熱が高く、熱伝導率が悪い」という性質を持っていることです。
「比熱が高い」とは「温まりにくく、冷めにくい」ということ。そして「熱伝導率が悪い」とは、「熱が伝わるのが遅い」ということです。

そのため、雪が降ってきたからといって融雪スイッチをONにしても、分厚いコンクリート全体は緩やかに温まり、ようやく表面の雪を溶かし始めるまでに約5時間もかかってしまいます。 救急搬送において、この5時間のタイムラグは致命的です。かといって、「一度温めたら冷めにくいから」と冬の間ずっとシステムを常時稼働(点けっぱなしに)させれば、雪が降っていない日にも無駄なエネルギーを消費し続け、莫大なランニングコスト(維持費)がかかってしまいます。
わずか5分で表面がしっかり温まる。急速融雪を可能にするアルミの特性
「必要な時に、すぐに温まってほしい」。そんな現場の要求を、熱伝導率が高いアルミニウムの特性と、独自の構造によって解決したのが「融雪アルミデッキヘリポート」です。
図のように、アルミデッキは荷重を受ける「本体」と、直接雪に触れる「蓋部」の二重構造になっています。ヒーター線が入っているのは、なんと表面のわずか4mm厚のアルミ板(蓋部)のすぐ下です。
分厚い床全体を温めるコンクリートとは異なり、表面の薄いアルミ板だけをダイレクトに温めることができるため、無駄なエネルギーを一切使いません。これにより、スイッチONからわずか5分で表面温度の上昇がピークに達し、一気に雪を溶かし始めることができます。


無駄な電力を消費しない。ランニングコストを最小化する効率的な仕組み
融雪アルミデッキは、目安として外気温がマイナス2℃、無風状態であれば、1時間に10cm程度の積雪を溶かすことが可能です(※環境条件により変動します)。これなら、急な大雪やまとまった降雪でもしっかりと着陸帯を確保できます。
また、融雪アルミデッキは、降雪センサーや外気温センサーと連動しています。「雪が降り始めた時」や「凍結の恐れがある温度まで下がった時」だけ自動的にスイッチが入り、不要な時は自動で切れる仕組みです。
温まるまでに5時間かかるコンクリートでは、この「こまめなオン・オフ」ができません。すぐに温まるアルミデッキは、不要な待機電力を抑え、電気代などのランニングコストを大幅に削減できます。

ひと冬の経験を、確実な備えに。ヘリポート設計における「素材選び」の重要性
積雪地域において、ヘリポートは雪に覆われる冬の期間であっても機能し続けなければならない重要なインフラです。
- コンクリート製: 温まるのに長時間を要し(約5時間)、冬期の維持費もかさむ
- アルミデッキ製: 熱伝導率の高さを活かし、短時間(約5分)で急速融雪の開始が可能
この冬、積雪や凍結による運用課題に直面した施設管理者の方も多いことと思います。将来的な施設の建て替えや、新たなヘリポートの設置を計画される際には、ぜひそのご経験を活かし、「冬場に確実に機能するか」「ランニングコストを合理的に抑えられるか」という「構造の選択」の視点を持ってみてください。
エアロファシリティーでは、厳しい冬の環境下でも機能する「融雪アルミデッキ」をはじめ、地域特性に合わせた最適なご提案を行っております。次期計画に向けた情報収集の段階から、ぜひヘリポートの専門家にご相談ください。