コラム
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「新・ヘリポートの造り方」
2025.07.16
何のための着陸帯? 豊洲市場のHマーク
2018年に東京・築地から移転した豊洲市場の屋上には、立派なヘリコプターの着陸施設があります。どうやら緊急離着陸場として整備されたようですが、正直なところ、なぜここにこれほど大規模な緊急離着陸場が必要だったのか、その理由がはっきりと見えてきません。
通常、緊急離着陸場は、高層ビルの屋上から避難者を救助したり、消防隊員が消火活動を行うために利用される施設です。しかし、高層ビルとは言えない豊洲市場の特性を考えると、ここからの人命救助や消防ヘリによる消火活動を想定することは、現実的ではないように思えます。特に、緊急離着陸場として東京消防庁のヘリコプターが使用することを前提とするならば、屋上は約20トン以上の積載荷重に耐えうる構造が求められます。大きなスパンを持つ屋上でこの荷重を見込む設計は、当然ながら費用がかさむものです。もし利用される機会がほとんどないとすれば、これはかなりの税金が投じられた、少しもったいない施設と言えるのではないでしょうか。
なぜこのような着陸帯が建設されたのか、都民の一人として納得のいく説明があればと感じています。もしこれが火災などの災害対策のためではなく、日本各地へ物資を運ぶような目的であれば「非公共用ヘリポート」としての手続きが必要となり、設計段階から異なるプロセスを踏むはずです。そうなると、夜間照明の設置やさらなる構造強化も検討されるかもしれません。
そもそも、埋め立て地に位置する豊洲市場は、周囲に比較的広いスペースも多く、屋上にこだわることなく地上にヘリポートを設置することも容易だったはずです。飛行場外離着陸場であれば、より簡便に設置が可能です。専門家の意見を十分に求めることなく「ヘリポートのようなもの」を造ってしまった結果、本来は不要な施設が生まれ、膨大な税金が無駄に使われてしまうケースもあるのだと、改めて考えさせられます。